私は海でセーリングをしている時に、ふと思うことがある。それは、「この水平線の先には何が、そしてどんな光景が広がっているのだろう。このままヨットで進んでいってその先の景色を自分の目で見てみたい」ということだ。かつては坂本龍馬も、桂浜から見える海を見てそんなことを思ったのだろうかと、歴史上の偉人に想いを馳せてみたりもする。さて今回我々は、そんな水平線のはるか先にあるイギリス、オックスフォード大学から精鋭9名を迎え入れた。彼らと過ごした10日間は、私の人生において最も充実した時間であることは間違いなく、そのすべてをここに記述すると、終わりが見えない。したがってここでは、10日間彼らと過ごして学んだこと、考えたことの中から最も重要なことだと感じたことを中心に記していきたい。まず、私はこの交流を迎えるにあたってある1つの目標を立てた。それは、オックスフォード大学の学生と誰よりも多くの会話をするということだ。イギリスの歴代首相54人のうち27人がオックスフォード大学出身という事実にも表されているように、名実ともに世界トップレベルの大学生と生活を共にできる日本人はそうはいない。それが、東京大学でも京都大学でもなく同志社大学なのである。この機会を生かせなければお金では換算できない価値を無駄にしてしまうことになると感じた。我々のメンバーの中には、国際高校出身者も多く私よりも英語が堪能であったが、そんなことは関係のないことだと自分を信じ込ませていた。それでは本題に戻ろう。私が、ホストをしたのは、レミーという私と同い年の男子学生である。彼とは昨年知り合っていたため、旧友に会うような不思議な感じを受けながらワンルームでの10日間の生活をはじめた。私はとにかく彼に日本を知ってほしくて、フリーの時間があれば、様々な観光地を共に訪れたり、日本食を堪能したりした。彼には何もかもが新鮮だったらしく、感嘆の声が随所で飛び出ており、こんなに美しい街を見たのは初めてだと言っていた。その言葉の真偽は正直わからないが、彼がよく言っていたのは現在、世界中の多くの都市は、アメリカ化してしまっているということだ。ヨーロッパはどこも同じような景色だし、中東や東南アジアでさえ街並みに個性を感じることが難しいのだという。私はこの、世界的にみて非常に特異で、個性溢れる街並みを守っていくことは日本の責務であると感じた。セーリングを通して見る彼らの姿も非常に新鮮だった。私はオックスフォードメンバーの一員として、彼らの練習のサポートを行ったが、出艇する前は非常に和気あいあいとしていた雰囲気が一転し、真剣な雰囲気に変わったのが印象的だった。レスキューボートに乗っていたメンバーは、ヨットに乗っているメンバーに細かいアドバイスを出す。それを目の当たりにできたことが学ぶことの多い非常に良い体験となった。オックスフォード大学とのレースでは勝利することができたが、その勝利以上に、彼らと一緒にヨットに乗ったという思い出を私は一生忘れることはないだろう。彼らとの刺激的な日々はあっという間だった。最終日はユニバーサルスタジオジャパンに行った。非常に楽しかったが、別れの時間が徐々に近づいているのを感じ、楽しさよりも少し切ない気持ちが上回っていた。その夜の最後の晩餐後、別れの挨拶とハグをするときに、オックスフォードのキャプテンであるルーシーが泣いていたから、それを見て私も少し涙をこぼしてしまった。最後にレミーが私に言ってくれた。「君より英語が上手なメンバーはいたかもしれないけど、君が一番僕たちに一生懸命話しかけてくれたし、君の気持ちは僕たち全員に伝わっている。だから僕たち全員が君のことを愛しているよ。」と。これは今回の交流において最大の収穫である、「人々が通じ合うための最も重要なのは心であり、言葉や、国籍、年齢、性別といったその他あらゆることは関係ない」ということが感じられた瞬間である。レミーとは、2ヶ月が過ぎた現在も連絡を取り合って、たまにスカイプで英語の指導をしてもらっている。近々イギリスへ行ってホームパーティを開いてもらうことが待ち遠しい。正直に言うと彼らと別れてからの日々には刺激が少ないと感じる。それが日常というものだから当たり前かもしれない。しかし、オックスフォード大学との交流は私の人生にきっかけを与えてくれたことに過ぎない。これで終わりじゃない。ここからがスタート。英語の勉強はもちろんのこと、あらゆるスキルを地道に高めて彼らに少しでも近づきたい。社会人になって、言わば日本代表として世界に飛び立つための準備を大学のうちから行う。今回の交流で学んだ。大切なのは気持ち、人間の根幹をなす部分だ。そこの部分を誰よりも強く持つ。そして、さらに成長した姿でまた彼らと世界のどこかで会いたい。
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